「流星ワゴン」を観に行くかどうか迷っている人へ。 [キャラメルボックス]
現在上演中の、演劇集団キャラメルボックスの公演「流星ワゴン」。
「泣いた」「よかった」という感想をネット上などで目にします。
しかし、もしかしたら、「観て辛くなる作品なら、今は観たくない…というか観ることはできない」
と思われる方がいらっしゃるかもしれません。
そういう方にむけて、自分が観た感想を書こうと思います。
「泣ける」という誘い文句では心を動かされない僕から、あなたへ、
「ぜひ、観に行っていただきたい」と、伝えたくて。
心に届くエンターテインメント作品として、おすすめします。
原作の小説は、重松清さんのベストセラー。
2002年度「本の雑誌」年間ベスト1にも選ばれているそうです。
僕がこの小説を読んだのは、2005年の、文庫本発売の時。
「好き」というには、ずいぶん心に「痛み」を感じる小説でした。
だけど、大切に思っていて、現在、再々読中です。
キャラメルボックスが「流星ワゴン」を舞台化する、ときいた時は、
「好きな作品だけど…これを舞台で観るのは、かなり辛いだろうなぁ」と思いました。
現実の、辛いことや悲しいことから、目をそむけたくはない。
でも、ただでさえ現実には辛いことがたくさんあるのに、
それ以上、辛いストーリーを観たいとは思わない。
まして、いろいろなことがあった今年。
これを観て落ち込む危険性すら感じていました。
僕の観たいのは、現実が変わらなくても、ちょっと違う視点を教えてくれるもの。
心があたたかくなったり、自分のまわりのものがいとおしくなったり、
明日への1歩を踏み足す力をもらえるもの。
そして、誰かが、真剣に、一生懸命に、心をこめて何かをしている、姿と、その表情。
今回、舞台の「流星ワゴン」を観て、驚きました。
まさに、上に書いたような作品に仕上がっていたのです。
さすが、心がほかほかになる作品を作り続けてきたキャラメルボックス。
もう、見事に、やられてしまい、それが、とてもうれしくて。
作品と、登場人物と、そしてお客さんへの「愛」にあふれていたのです。
原作は、あのモノトーンといえる世界が魅力だと思います。
でも、キャラメルボックス版では、原作のひりひりとした世界と、
それをより伝えるためのさまざまな彩りとのコントラストが、魅力だと感じました。
まず、このキャラメルボックス版は、物語の世界へすんなり入れる仕掛けが、あるんです。
その仕掛けに乗せられてしまうので、素直に、物語を受け入れられるんですね。
いろいろ考えを巡らせる前に、ただただ、登場人物の状況に、入り込んでしまう。
すると、辛さだけじゃなくて、それを乗り越える力まで、伝わってくるのです。
それから、本を読んで自分が想像していたより、はるかに魅力的な、登場人物たち。
自分が読んだ時は、距離を置いて見ていた人物たちが、
心にキラリと光るものを持って目の前にあらわれるのです。
それぞれにダメな部分を抱えていても、それを含めて、全員のことが好きになってしまいました。
だからこそ、あのラストの、
自分で読んだ時には味わえなかった感動につながったのだと思うのです。
どの登場人物にも、「ありがとう」と伝えたいです。
そして、心をときほぐすような笑いがあることに、救われます。
痛みから目をそらさずに、描くべきところは描いているけれど、
その痛みにどっぷりと沈めてしまうような、突き放されたような感覚には、ならないのです。
そして、そうやってほぐされた心で観るからこそ、ストレートに、
登場人物たちの気持ちが伝わってくるのだと思います。
音楽や照明も、人物や物語を、あたたかく包んでいて。
決して、無理やり泣かせにかかってきたりはしないのです。
安心して、浸ることができます。
いつもよりちょっとおそるおそる観に行った神戸公演初日。
初日に行ってよかったです…あと2回、観劇することができたから。
この作品を、舞台化してくださって、ありがとうございます。
エンターテインメントとしてのこの舞台の後ろには、
キャラメルボックスが今まで積み重ねてきたもの、伝え続けてきたのものが、
透けて見える気がして、それにも、感動しました。
余談ですが、今公演のテーマに使われている曲、
SEKAI NO OWARIの「スターライトパレード」。
今、ラジオから、がんがん流れています。
今週だけで、ラジオで3回も聴いてしまい、そのたびに、舞台のことを思い出しています。
公演のテーマ曲が不意打ちでしょっちゅうラジオから流れてくる、という状況は初めてで、
いやはや、どうやって気持ちをコントロールすればいいのでしょう…(笑)
公演情報はこちら。
http://www.caramelbox.com/
残すところ、東京公演のみ、12月25日までです。
平日がおすすめ、とのこと。今からでも、チケットの購入ができます。
あと、こちらで、舞台のダイジェスト映像を観ることができます。
http://www.caramelbox.com/stage/meteor-wagon/interview.html#movie
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